みんなの話を聴きたい
「ソーシャルデザイン実習」班の顔合わせ。そして非公式のオンライン雑談会
本日の札幌は雨模様、5月ですが内地(北海道外)と比べまだまだ肌寒く、ストーブをつけて過ごしています。
さて、昨日の土曜日は、「本科実習」の初回でした。また、夜には非公式の「オンライン雑談会」を本科・選科生交えて開催しました。
CoSTEP本科の「実習」
これまでも何度か紹介しましたが、CoSTEPには「本科」と「選科」があり、本科は通学を基本とします。そして講義や演習に加えて本科は、「実習」と呼ばれる実践活動があります。
本科実習は、今年度は3つの班に分かれて行います:
- 対話の場の想像実習(12名) - 担当: 奥本素子, 古澤正三
- グラフィックデザイン実習(5名) - 担当: 池田貴子, 大内田美沙紀
- ソーシャルデザイン実習(5名) - 担当: 朴炫貞, 福浦友香, 寺田一貴
「対話の場の想像実習」(「対話」と略称されるようです)では、サイエンスイベントの企画・開催を行うそうです。
「グラフィックデザイン実習」(「グラ班」と略称されるようです)では、対話班が開催するイベントのポスター制作を行ったり、教材やワークショップの制作(都市ギツネにまつわる諸問題のリスクコミュニケーション)を行うそうです。
上記2班は、活動にある程度の枠組みがありますが、他方で「ソーシャルデザイン実習」(「SD」と略称されるようです)は、「科学」「アート」「社会」を軸として挙げていますが、やること自体は決まっておらず、メンバーに委ねられています。
それぞれの詳細は、2023年3月に開催された受講説明会の動画アーカイブも参考になります:
2023年度 CoSTEP 受講説明会/修了生座談会 - YouTube
実習のはじまり
私はこのうち「ソーシャルデザイン実習班」(SD)への配属となりました。先週の開講プログラムでのウェルカムパーティーでも担当スタッフの方々やメンバーの一部とはお会いできたのですが、全員で集合するのはこの日が初めてです。
北海道大学のキャンパスにある教室へ集まり、実習が始まります。この日は初回ということで、SDを率いるCoSTEPスタッフ朴炫貞(パク・ヒョンジョン)さんの言葉を借りると「激しく自己紹介」しました。
ちなみに朴さんは、先日のインタビュー演習初回の日記で言及した「札幌人図鑑」へもご出演されています:
9マスで自己紹介する
まずは、受講生5名とスタッフ3名による「9マス自己紹介」です。インタビュー演習初回でも「4マス」での自己紹介をやったのですが、それと似た形式です。
白紙に罫線を引いて3x3で9マス作り、中央へ名前を書いて、残りの8マスに自分を表すこと、好きなことだったり関心があること、この実習でやりたいこと、などを書きます。これを元にそれぞれ自己紹介していきました。
この班は、受講生5名中、学生が3名、社会人が2名で、またそれぞれバックグラウンドや専門分野も異なります。9マスを見ながら、それぞれの話を聞いたり、質問をしたりしてわいわいとやっていました。これをフックとして、またおいおい深掘りしていけるとよいかなと思います。
手元を全く見ずに、相手の顔を描く
そして9マス自己紹介の後にやったワークが興味深かったです。なるほど、こういうのもあるのかぁと新鮮でした。
今回行ったのは「Blind Contour Drawing」。対象物を見て、手元を全く見ずにその輪郭を描きます:
Blind contour drawing - Wikipedia
これは元々、デッサンの練習方法としてあるようです。帰宅してから思い出したのですが、家にあった絵画の本に、似たエクササイズが紹介されていました:
ここでは、ニコライデスの輪郭画法をもう少し推し進めた方法を使います。これを私は「純粋輪郭画法」と呼んでいます。この方法はたぶん左脳には喜ばれないはずです。この課題では、いつもよりゆっくりとあらゆるものを観察しながら描くこと、そしてその途中はぜったいに自分の作品を見ないことが要求されます。
ベティ・エドワーズ(訳:野中邦子)『決定版 脳の右側で描け 第4版』(河出書房新社, 2013), 第6章「エッジとはなにか—輪郭線は2つの部分の境界線」p.88
今回のワークとしては、ある種のコミュニケーションの手段としてこの形式を用いています。これが面白い。
具体的には今回は、名刺サイズの紙を渡され、みんなである一人のメンバーを30秒見つめて、それをクレヨンで描きました。先ほど述べたようにこの時、自身の手元を見てはいけません。
相手の顔を30秒もまじまじと見つめることなど、子供でもなければまずないでしょう。そしてその時に、ただまじまじと見つめるというだけエクササイズでは気恥ずかしいでしょうが、描くというやることがあるため、それが軽減されています。
私たちはほぼ初対面でこれをやりましたが、よく知っている人同士でやっても、かなり発見があるんじゃないかなと思います。
また、手元を見ずに輪郭を描く、というのもよくできていると思いました。これが普通の似顔絵・デッサンであれば、人によってお絵かきの得手・不得手がありますし、下手に描いてしまうと恥ずかしい。でも、これは手元を見ないので、ぐちゃぐちゃになって当然です。また、クレヨンを用いるのも、画力を誤魔化すという意図があるそうです。紙のサイズは今回、名刺サイズでしたが、これがA4紙程度になると、30秒では足りず2分くらいいるだろう、とも言っていました。
私は、以下のようになりました:
他の方々の絵も見ると、それぞれ特徴が現れていて興味深いです。紙面に対してのスケール感も人により異なり、ある人は中央へ寄せて書いていて、他の人は紙を最大限使っていました(手元を見ていないので、机にはみ出たケースもありました)。また、描き手が「どこへ注目したか」というのも見てとれます。頭髪の感じであったり、服の様子であったり、メガネであったり。
ちなみにこういうワークは、やはりオフラインでこそかなあと思ったのですが、後で聞いたところによると朴さんはこれを以前オンラインでやったことがあって、「オンラインだと自分の顔を描ける」と言っていて、おおなるほど、オンラインにもオンラインなりの利点があるんだなあ、と思いました。オンラインだと、相手の顔を凝視することが良くも悪くも容易かもしれません。
ソーシャル・デザインって、アートって?
自己紹介とワークの後は、この実習班についての概要説明がありました。
上で述べたようにこの班は、他と異なり、活動の手法もテーマも決まっていません。「なんらかの社会問題」へ取り組むのですが、どの社会問題へ取り組むのか、というのも我々に委ねられています。そのためまずはその手前、それぞれが何に興味があるか、何を調べてみたいか、を考えていくことになりそうです。
「ソーシャル」も「デザイン」も、とても広い概念です。軸の一つに挙げられる「アート」も、私はよくわかっていません。
一例として、「Assemble」というロンドンのコレクティブ(アーティスト集団)と、その取り組みが紹介されていました:
この「The Cineroleum」というプロジェクトは、使われていない「ガソリンスタンド」を、100名を超えるボランティアにより手作りで「映画館」にする、というものです。
後で調べて知ったのですが、これに関連するような、公共の場をつくる活動を表す「プレイスメイキング(Placemaking)」という言葉があるそうです:
このほかにも、これまでCoSTEPで取り組んできた様々な活動がいくつかざっと紹介されました。どれも異なるアプローチで多様です。個人的には、以下のものが面白いと感じました:
- 「New Normal, New Life 3つのミッションをクリアせよ」
- 「現金を使わずにキャッシュレス決済のみで定山渓(札幌郊外の山中にある温泉街)へ行く」などのミッションを行い、ラジオ番組として放送
- 参考: ソーシャルデザイン実習によるラジオ番組「New Normal,New Life」がAIR-G’ FM北海道にて放送されました! – CoSTEP – 北海道大学 大学院教育推進機構 科学技術コミュニケーション教育研究部門
- 「夜の遠足-99年目の市電に乗ろう!」
- 札幌の市電の車両を貸し切って走らせて、その車内で市電について知るイベントを開催
- 参考: 市電イベント「夜の遠足-99年目の市電に乗ろう!」を開催しました – CoSTEP – 北海道大学 大学院教育推進機構 科学技術コミュニケーション教育研究部門
- 「カガクテル」
- 札幌に関連するモチーフをもとにオリジナルカクテルを発案し提供するイベント
- 参考: 「カガクテル」を開催しました – CoSTEP – 北海道大学 大学院教育推進機構 科学技術コミュニケーション教育研究部門
アートというと、作品をつくるという印象がありましたが、このように、場をつくったり、イベントを催したりという方向性もあるのだなあと思いました。私は個人では、主に一人で、パソコンで制作してWebで公開、ということばかりやっているので、そうでない方面を試みてみたいかもという気持ちも少し芽生えます。
また、こういうイベントなどは、やって楽しい、というのはありつつ、それが実際に社会や他の人々へどう影響するか、社会課題の解決へと結びつくのかということも、CoSTEPという場ではよくよく検討すべきでしょう。
「観察」「発見」「表現」というふうに朴さんが述べられていました。これら3つは暗黙的に左から右へと進んでいくように見えますが、その上で、ではそこから逆方向へどのような矢印を伸ばせるか。まだ漠然としていて、よくわかっていません。
実習時間の後も、ランチにスープカレーを食べながら皆で色々と話していました。
オンライン雑談会
この日の夜には、ビデオ会議で「雑談会」をやってみました。私が勝手に言い出した、CoSTEP非公式のイベントです。
開催の背景
本年度は、本科22名、選科45名、研修科1名、合計68名の受講生がいます(ちなみに過去の受講人数は、公式サイトで確認できます: 沿革・受賞歴 – CoSTEP – 北海道大学 大学院教育推進機構 科学技術コミュニケーション教育研究部門)。
受講生用サイトで各自の自己紹介文を読めるのですが、それぞれ多種多様な方々です。そしてわざわざCoSTEPへ応募したということは、何かしら悩んでいたり、考えていたりすることがあるはずです。話したいことがあるはずです。
しかし、本科生と選科生、そして選科生同士が会う機会はかなり少ない。また、本科生同士は毎週の通学で会いますが、班が異なると話す機会も少なくなるのではと思います。
選科は、本年度は「A」と「C」に分かれています。選科生は基本的にオンラインで各自、講義動画を視聴します。加えて「集中演習」があり、「選科A」は7月、「選科C」は10月に、3日間、北海道へ来て取り組みます。ほとんどの人たちは、この時に初めて会うことになるようです。また、AとCは別日程なので、それぞれ会うことがありません。別途、「共通実習」という本科・選科とも選択可能なイベントがあるのですが、こちらは任意参加で、場合によっては人数制限もあるようです。
先週の開講プログラムでのワークショップでは、わざわざ北海道外から来られた選科生の方々と一緒のチームでやっていたのですが、何もなければ次に会うのは来年3月の修了式かなあ、それはちょっともったいないね、などと話していたこともあり、オンラインでなにか試してみようと思い立ちました。
それで、少しの勇気を出して、公式で用意されている「受講生交流掲示板」と「Facebookグループ」(まだほとんど投稿は無い)に投稿してみたのですが、そもそもこれらの場所をどれくらいの人がチェックしているのかもよくわかりません。事前に数名、面識のない方々から「参加します!」との返答をいただけたのですが、どうなるものかとドキドキしながら当日を迎えました。
4時間半、喋りっぱなし
蓋を開けてみると、何と本科2名、選科8名、計10名が集まる機会となり、想像以上に盛り上がり、かなり驚きました。嬉しく、楽しかったです。
始まる前は、まあ軽く自己紹介くらいかなあと思っていたのですが、突っ込んだ話もけっこう出てきて、やはり皆、思っていること、話したいことがあるよなあと実感しました。結局、19時から23時半までやっていました。
選科の方々からは、今年度が始まったといっても何をどうしたらいいのか、他の人たちがどうしているのかわからず不安、といった声が多くありました。
そういった状況を改善するためにも、このようなオンラインの場を設けていけるとよいのでしょうが、そもそも選科生はコースの雰囲気や他の受講生の状況がまだわからないでしょうから、そういった提案をするのは心理的ハードルが高いのでは、と想像します。来年度は、期初にCoSTEP公式の「選科オンライン顔合わせ会」というような場が用意できれば、その後の受講生らによる自発的な活動も始めやすくなるのかなと思います。
選科の皆さんでのオンライン活動、例えば「講義動画を一緒に見て感想を語る会」などやれると良さそうですね、という話が雑談会で出たのですが、早速今日、その企画が提案されていました。
せっかくのご縁ということで、みんなで、わいわいやっていけるといいですね 🏕️