科学技術コミュ日記

インタビューが楽しい

インタビュー演習その2(西尾直樹)、実際にインタビューしてコラムを書く。そしてオンラインもくもく会、みんなで講義動画を見て語る

西尾直樹さん(演習でチョークは使っていません)
西尾直樹さん(演習でチョークは使っていません)

今日は、夜に北大で「インタビュー演習」の2回目があり、そのあとには、オンラインで講義動画を一緒に見て感想を語る「もくもく会」もありました。

斜にかまえる、かまえない

本題の前に、ちょっと違う話題をひとつ。

先週のインタビュー演習では、「お地蔵さんゲーム」というワークを行いました。これは二人一組で、まず「目線を合わせず、頷きや相槌もしない」地蔵スタイルで話を聴いた(聞いた)あと、次に「頷いたり相槌を行う」傾聴スタイルで聴いてみるというもので、聴き手の態度が語り手へどう影響するかが実感できました。

その話をしたら友人が、以下の記事を教えてくれました。これは大変面白く、そして興味深い記事でした:

斜にかまえる、かまえないを1分ごとに切り替えるとどうなるか :: デイリーポータルZ

タピオカの時と同様、斜にかまえずに見ると気がつく範囲が広くなり、追加で調べる傾向があることがわかってきた。

だいたいそこで新しい発見があり「うわー!知らなかった!」が出てくる。

斜にかまえる切り替えを繰り返していたら、なんでも褒めたり逆に微妙な点に気づいたりする状態が続いた。脳が謎の進化を遂げた感があった。みなさんもぜひたのしく切り替え散歩してみてください。

読んでいて、「6つの帽子思考法」(Six Thinking Hats)というものを思い出しました。英語では「Wear a hat」「Wear many hats」といったフレーズがあり、ここでの “hat” は肩書きや役割を表します。6つの帽子思考法は、異なる”帽子”(中立性・感情・警戒心・積極性・想像力・冷静)を一つづつかぶり、そのときはそのスタンスで議論する、というようなものです。例えば「警戒心」の帽子を被っているときはデメリットをあげていく、といった感じです。

スタンスを変えてみることは、想像以上に自分へも相手へも影響がありそうです。

これは川本思心さんによる講義「科学技術コミュニケーションとは何か」で紹介された「素人の専門性(Lay-expertise)」や「欠如モデル」の話題とも繋がりそうですし、傾聴だけでない、開講式特別プログラムで須田桃子さんが述べられた「ジャーナリストと研究者の緊張感ある関係」を考える上でも参考になるかもしれません。

… 本題に戻ります。

インタビューをやってみよう

さて今晩の演習は、先週のインタビュー演習第1回に続いて2回目、後半戦です。先週は主に座学でしたが、今週はそれを踏まえて、実際にインタビューをやってみる時間となりました。

冒頭で、最近あったことなどを共有するチェックインを行い、先週の授業を振り返ったあと(私の書いた日記も紹介していただきました、ありがとうございます!)、さっそく別の実習班の方とペアになり、相互に25分づつインタビューを行います。

楽しかったけれど

今回は「インタビューシート」というものが渡されて、そこにあらかじめ目的や進め方、留意点、そして質問項目が記されていました。

何より一番大切なことですが、「発見」や「パートナーのことをよりよく知ること」を楽しんでください!

と書かれていましたが、結果としては時間を忘れて楽しい時間を過ごすことができました。一方で、先週学んだインタビューについての事柄、例えば傾聴であるとか、深さ(”氷山”)や多面性(”象”)の観点などなどを意識できたかというと、それは話に夢中でほとんど意識できていなかったなあと振り返って思います。

シートに用意されていた質問には、自己紹介を訊くものに加えて、科学や科学技術コミュニケーションとの出会いや、CoSTEP修了後に取り組みたいこと、将来的に実現したいこと、そのために身につけたい知識や技術は?、といったものがありました。

インタビューや対話では、自身と相手に共通の関心や価値観があるとそれだけで会話が弾んでしまうでしょう。先週述べられた、インタビューアーの基本姿勢として求められる「好意的関心」が自ずと成り立ってしまう、という感じです。

技法と気づき

25分という時間枠でしたが、聴く側としてはタイムキープをしつつ、話を発散させたり収束させる必要があります。話へ夢中になってしまう性分の私は、そこがなかなか難しいなと思いました。ここで、インタビューの目的を念頭に置いて、流れを客観的に眺めつつ進めることができると、限られた時間がより有意義なものになるのでしょう。

座学では「半構造化インタビュー」の話がありました。かっちりと進めるのではなく、いくつかの質問項目は用意しつつ、相手の反応に合わせて問いを追加していく、というものです。これは、今回は自然とそのようになったと思います。用意された質問項目が、広がりやすい性質のものだったことが大きいのではないでしょうか。ただその分、発散しすぎないよう注意する必要があるでしょう。

また座学では、「言葉が途切れても介入しない」、それは話し手が自己洞察する時間にもなるから、という話題がありました。今回は、相手の方が途切れず明瞭にお話しされたこともあり、その機会があまり無かったのですが、インタビューという互いの立場がある程度明確な状況では、これは一般的な対話よりも意識的に実践しやすいかもなあ、とも思いました。

私はまず聴く側をやって、次に話す側をやりました。これが面白くて、インタビュー”される”側としても相手の立場が少し想像できて、ここは話し続けた方がいいかな?と意識してみたり、話し手としての学びもある機会だったと思います(相手の立場を意識しすぎても良くないのかもしれませんが)。

インタビューを終えて

さて、このインタビューではメモをもとに、200~400文字程度の「人コラム」をつくることが最終的な課題(宿題)です。そのための素材としてお互いの写真を撮ったりもしました。お話しするのは楽しかったですが、ここまでで半分、ここからそれを文章へとまとめていく必要があります。

西尾さんが「聞いたことをただ網羅的に書くのではなく、あなたが感じた魅力や面白さを表現できると良い。”象のフォルム”というより、”迫力あるその鼻”、みたいな」などとおっしゃっていました。かなり短い文字数ですし、なにか切り口を明確にして書けると良さそうです。

授業の最後、インタビュー相手と雑談していて「大人になるとこういう話をしないよね」という話題になりました。確かに普段は、自分の領域の人と共通認識が多い上での専門的だったり内輪な話をするし、はたまた、そうでない人とはそこまで突っ込んだ話をすることはなかったり、だと思います。今回のような話題をじっくり、ふだん接点のない分野の、しかし相似する問題意識を持つ方々と話せるのは、CoSTEPの醍醐味ではないでしょうか。

先週にも増してあっという間の1時間半でした。授業後も何人か教室に残って、西尾さんや受講生同士でかなりのあいだお喋りしていました。

もくもく会をやってみよう

さて、その演習を終えて、オンラインの「もくもく会」があったので、そちらへも途中参加してみました。

「もくもく会」とは、参加者が集い、”黙々”と各自の勉強など作業を行うゆるいイベントの形式です。IT業界では一般的なものですが、そうでない界隈の方は耳にしたことがないかもしれません:

もくもく会 (集会) - Wikipedia

先週開催したオンライン雑談会で、通学がない選科生は「講義動画を一緒に見て感想を語る会」などをやるといいんじゃないかという話があって、早速その直後に、その場にいた方が企画してくれたのでした。

各自がオンラインで講義アーカイブを視聴する選科生にとっては、このような機会があると、学習のペースが掴めて良さそうです。

今回は、須田桃子さんによる開講式特別プログラム「合わせ鏡の間に立って〜科学ジャーナリストの視点から〜」を各自視聴して、その後に感想を語り合う、という流れでした。私は後半の感想パートから参加しました。

参加人数は多くはなかったのですが、STAP細胞事件を始めとした研究不正の話、生物学分野の特徴の話、はたまた理系分野と女性の話(横山広美『なぜ理系に女性が少ないのか』(幻冬社, 2022)という書籍も紹介していただきました)などなど、さまざまな話が出てかなり面白かったです。むしろ少人数だったからこそじっくり話ができたようにも思います。

インタビューが(技術の実践はともかく)楽しかったという話もそうですが、このような場こそがCoSTEPの醍醐味だろうなあと改めて思いました。

引き続き、講義や演習、実習を行いつつ、多彩な方々と様々な話題を深く語り合えるといいなと思います 🎙️