科学技術コミュ日記

1月と2月の活動

イベント「まるっと外来生物カードラリー」, 「サイエンス・パフェ」, 「ななめせんなめせん」/ グラフィカルアブストラクト演習 / 札幌国際芸術祭(SIAF) 共通実習 / SFプロトタイピング演習

札幌国際芸術祭(SIAF)にて、未来劇場のチェ・ウラム『Red』
札幌国際芸術祭(SIAF)にて、未来劇場のチェ・ウラム『Red』

札幌も今年は暖冬で、1月に雨が降ったりとびっくりするような日もありましたが、本州の人からは信じられないほどの降雪も日々あります。3月になった今も、よく降っています。

年末年始から2月までは主に、自身の所属する本科ソーシャルデザイン班の展示に向けて慌ただしくしていました。この展示については、また改めて述べます。

1月と2月には、本科対話班によるイベント「まるっと外来生物カードラリー」と「サイエンス・パフェ」があり、少しお手伝いもしました。また、グラフィカルアブストラクト演習、札幌国際芸術祭 共通実習、SFプロトタイピング演習などの演習・実習もありました。

モジュール6講義は、12月から2月にかけて、計5回がありました: モジュール6講義 - 科学技術コミュ日記(2024-03-02)

イベント

「まるっと外来生物カードラリー」

本科の対話班により、札幌市の円山動物園にて、子ども向けのイベントが開催されました。

「まるっと外来生物カードラリー」フライヤー

子ども向けの、外来生物について学ぶイベントで、クイズに答えて外来生物カードを集めるというものです。紙芝居なども行われていました。

「まるっと外来生物カードラリー」円山動物園での様子

私もお手伝いで参加して、タンポポのブースを担当しました。環境省指定要注意外来生物の「セイヨウタンポポ」は、20世紀初頭に北アメリカから札幌へ導入され、全国へ広がったそうです(札幌農学校の教師が野菜として持ち込んだという説があるそうです)。在来タンポポと違い、萼(がく)のように見える部分がそりかえっているのが特徴です。現在は北海道で見かける大多数がこの外来種となっているそうです。

「サイエンス・パフェ」

本科対話班の別グループは、札幌市内のカフェで、サイエンス・パフェというイベントを開催していました。

「サイエンス・パフェ」フライヤー

「サイエンス・パフェ」私たちの未来について、みんなで語るティータイムを開催 – CoSTEP

私は、自分たちの展示準備で余裕がなかったのと、席が限られていたので外部のお客さんが来るかなと遠慮して参加しませんでしたが、パフェの試作を食べたりはしました。作るごとにどんどんクオリティが上がっていっていました。

3回それぞれで異なるテーマを設けて、パフェを食べながらの対話がなされたそうです。

「ななめせんなめせん」

2月、我々ソーシャルデザイン班は展示を開催しました。これについては、また別途、記事を書く予定です。

2024-03-30追記: 書きました: 企画展示「ななめせんなめせん」 - 科学技術コミュ日記

「ななめせんなめせん」フライヤー

ソーシャルデザイン実習が展示「ななめせんなめせん」を開催します – CoSTEP

演習・実習

グラフィカルアブストラクト演習

CoSTEPスタッフでサイエンスイラストレーターの大内田美沙紀さんによる、論文などの内容を図示する「グラフィカルアブストラクト」についての演習がありました。

サイエンスイラストレーションについては、以前も何度か記事にしています:

また大内田さんは現在、医学界新聞でサイエンスイラストレーションに関する連載をされていて、毎回興味深いお話を述べられています:

サイエンスイラストで「伝わる」科学 | 連載一覧 | 医学界新聞 | 医学書院

「自分が描きたいものやエゴに囚われず,『科学』に従って制作していくのがサイエンスイラストレーターだ。よってわれわれは『アーティスト』ではない」

駆け出しの頃,師匠のような存在の人にそう言われた。修正依頼の連続で心が折れそうになるときはいつも思い出している。

アーティストたちはアーティストそれぞれ独自の「妥協を許さないゾーン」があり,それらを生み出す苦悩があるだろうと想像する。ときには何をめざし,何を作りたいのかわからなくなることがあるのだろう。

サイエンスイラストレーターは,「科学」というある意味わかりやすい指標が示されており,同じく「科学」を追求するクライアント側とも衝突することがあまりない。そして科学は尽きることがない。なんてありがたいことなのだろう,と心から思う。

サイエンスイラストで「伝わる」科学(10)正確性を極める(大内田美沙紀) | 2024年 | 記事一覧 | 医学界新聞 | 医学書院

この演習の初回講義では、実際にアブストラクトのスケッチを描いてみるワークを行いました。今回は、以下のプレスリリースを題材に「解説系」「比較系」という2種類のスケッチを作成しました。他の方々によるものは、自身ではない発想のものも多く興味深かったです。

新着情報: 鳥の目ヂカラは相手次第~鳥類の顔の特徴の多様性理解に貢献~(理学研究院 准教授 相馬雅代)

グラフィカルアブストラクト演習 - 初回

またこの演習では、自身が取り組みたいテーマについて概要を提出し、それに基づいてグラフィカルアブストラクトのラフ画を作成、それにコメントをもらい、最終的な図を作成しました。

私は、以下の内容で取り組みました:

タイトル
インタラクティブなメディアの地図投影法

研究概要
3次元の「現実世界」を2次元の「地図」で表すとき、その原理上、全てを正確に再現することはできない。3次元の世界は「投影」により2次元へと写される。よく知られるメルカトル図法をはじめ、これまで数々の地図投影法が提案されているが、完璧な投影法は存在し得ない。それぞれ、距離・角度・面積を適切に表現できなかったりと、長所・短所がある。しかし、ダイナミックでインタラクティブなメディア、つまりコンピューターにより、状況に応じて最適な投影法へとシームレスに切り替えていくことが可能である。これは紙の地図では成し得ない、新しい情報表現のかたちである。

上記の研究概要の中で、最も重要なポイントは何ですか?
ダイナミックな地図表現の必要性と実現可能性

上記の研究について、キービジュアル(GAで最も印象付けさせるべきビジュアル)は何だと思いますか?
地図がダイナミックに変わっていく様子?さまざまな投影法の比較?

以前行った インタラクティブなメディアの地図投影法: WebメルカトルからAdaptive Projectionsへ / MIERUNE 社内勉強会 #033 - Speaker Deck という発表をベースにしています:

以下が、私の提出したラフ画です:

グラフィカルアブストラクト演習 - ラフ画

これに対し「左下に収束していくイメージよりも、最終的に右下で終わるフローが見やすいし、ポジティブなイメージになる」などなど、添削コメントをいただきました。それを元に制作していき、大内田さんに直接相談できるオフィスアワーも経て、以下の最終的なものを作成しました。作成にはAffinityというアプリを用いました。

グラフィカルアブストラクト演習 - 最終成果物

これを元に、他のメンバーの前で発表を行い、フィードバックをもらいました。見づらい色使いがあることや、背景(テイソー指示楕円)の意図がわかりづらく表の地図との関連を考えてしまう、口頭説明の割に文章情報が少ない、地図と矢印がずれている、などなど、様々な意見をいただきました。

スライドを作るのとは、似ているようで、実は意外と違っているように感じました。

ちなみにこの演習には計7名が参加したのですが、私ともう一人の社会人以外は全員、学生さんで、みな生き物に関する研究の発表をされていて、北大らしいなと思いました。

札幌国際芸術祭(SIAF) 共通実習

札幌国際芸術祭(Sapporo International Art Festival, SIAF(サイアフ))は、2014年から3年に一度開催される芸術祭です。

2014年に第1回、2017年に第3回が開催され、2020年はコロナ禍のため開催中止、2024年は初の冬開催となりました:

LAST SNOW 札幌国際芸術祭 SIAF2024 1/20〜2/25 – 札幌の冬が変わる 特別なアートイベント

今回は共通実習として、本科・選科の希望者が参加し、SIAFの展示を、二日間かけて回りました。12月に東京で開催された「美術館・科学館実習」と同様の形式です。

SIAF2024は市内6会場を中心に開催されましたが、そのうち、初日に「札幌文化芸術交流センター SCARTS」と「モエレ沼公園」、二日目に「北海道立近代美術館」「札幌市資料館」「未来劇場」を訪れました。

様々な作品に触れましたが、以下、印象に残っているものをいくつか述べます。

SCARTS2階では、「都市と自然をめぐるラボラトリー」(SCARTS x SIAFラボ x Panoramatiks)という展示がありました。以前教えてもらってクールだなあと思っていた、冬季の雪壁を立体造形した「除雪彫刻」や、除雪車のGPS測位データを地図上でアニメーションしたものなどを実際に見ることができて嬉しかったです。

除雪彫刻

除雪車のGPS即位データと地形データでみる大雪のまち

除雪彫刻、夏の帰省

未来劇場は、もともと劇団四季の劇場だったところで、その中を巡回する形で、様々なメディアアート・現代美術作品が展示されています。普通の美術館やギャラリーとはまた違う、舞台裏を通ったり奈落(舞台下の空間)へ降りたり、最後はこの記事冒頭の写真でも示している舞台上へと出てくるのですが、その旅程も含めて興味深かったです。チョ・ウラムによる、機械仕掛けの生き物「穴の守護者」や、鏡の反射によって底が見えないような「無限の穴」、後藤映則による、回転するメッシュ状の立体物へ光を当てることでパラパラ漫画のように動いて見える「In motion」、青木美歌による、ガラスで粘菌やウイルスなどを形作った作品群などが印象に残っています。

北海道立近代美術館でも面白いものがありましたが、宮田彩加(みやたさやか)による刺繍の作品を特に覚えています。ミシンをバグらせてグリッチを作り出すものや、MRIデータを大きなタペストリーにしたものなど。技術を用いており、かつスクリーンメディアではなくて実際のモノになっているところなど、面白いなと感じました。私は何も知らないで部屋に入って、その色彩から最初、何かの民族意匠かなと思いました。

ミシンでのグリッチ

MRIの刺繍

また、初日の夜には、当実習をとりまとめているCoSTEPスタッフの朴炫貞さんに連れられて、希望者らで「天狗山アートスタジオ」というアーティスト・イン・レジデンス拠点を訪れました。

この日は、資材循環プロジェクト「shukatsu(シュウカツ/周活)」の足場が組まれていたり、DJが回していたり、外では北海道テントサウナ団がサウナをやっていたり、氷のドーム「The ICEMENS」があったりしました。札幌にこのような場があることを初めて知り、新鮮で面白い体験でした。

天狗山アートスタジオでのTHE ICEMANS

SFプロトタイピング演習

2023年秋に着任されたCoSTEPスタッフの宮本道人により、急遽追加で開催された演習です。オンラインで2回ありました。

宮本道人 (Dohjin MIYAMOTO) 公式

道人さんは、SFプロトタイピングに関する著書を2023年に発表されています: 古びた未来をどう壊す? 宮本道人 | ノンフィクション、学芸 | 光文社

第1回は、オンラインで様々な単語を組み合わせてアイデアを広げていくワークを行いました。「理解不能な文字列をどんどん書いて、意味はずっと後から考えよ」といった具合に、発想を広げていくことが求められました。第2回では、様々な企業と活動している道人さんから、その具体的な中身や進め方の詳細が一例として述べられ、科学技術コミュニケーションをどうビジネスとして成立させるかに関して参考になるものでした。

未来を考えるとき、一つの確固たるものではなく、可能性をたくさん持つことが大切である。その時、未来を未来として考えるのではなく、フィクションでその可能性を想像すると良い。また、具体的に考えるのが良い、というような話は、なるほど思いました。漠然と広く考えるのではなく、ある特定事例の物語を考える。

SF作家の樋口恭介による「イシューからはじめないこと」という言葉も紹介されました。「バックキャスティング」、つまり望む未来を先に定義し、そこから逆向きに現在へ至り、ではそれに向けてどう進めていくかを考える手法についても述べられていました。

事前の参考資料として、以下の楽曲が紹介されていたのも興味深かったです:

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これで全ての講義・演習・実習が終わりました。あとは明日、3月9日に成果発表会・修了式があって、おしまいです。

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