科学技術コミュ日記

7月と8月の講義・演習・実習

講義: 実践入門(朴炫貞), 伝えるプレゼンテーション(古澤正三・池田貴子), 映像メディアによる科学技術コミュニケーション(早岡英介), 科学の目で描くイラストレーション(大内田美沙紀) / 演習: ディベート演習(種村剛), グラフィックデザイン演習(朴炫貞) / 実習: 青写真ワークショップ / 選科A, もくもく会

青写真ワークショップでの影絵の練習
青写真ワークショップでの影絵の練習

今年(2023)の夏は、札幌も猛暑でした。1876(明治9)年の観測開始以来もっとも高い36.3度を記録したり、冷房機器がないため学校が臨時休校になったりしていました。私の自宅もエアコンがなく暑い日々でした。

さてCoSTEPでは、7月はモジュール2の講義や演習がありました。また、私の所属する本科ソーシャルデザイン(SD)班は、8月開催の青写真ワークショップに向けて慌ただしくしていました。それらが終わって9月までは、講義や実習のないひとときのお休み期間でした。

講義

7月は、モジュール2「表現とコミュニケーションの手法」として、CoSTEPスタッフらによる4つの講義がありました。

実践入門(朴炫貞)

SD班の担当でもある朴炫貞さんによる講義。この「実践入門」は毎年、違うスタッフが担当するそうです。

今回の講義では、実践について、国内外のさまざまなイベント(documenta 15, あいち2022, 光州ビエンナーレ2023, ヴェネチアビエンナーレ, など)や、朴さん自身がCoSTEPで取り組んできた事例が紹介されました。オンラインでリアルタイムに質問を受け付けるslidoも活用されていました。

実践を、「わかるを揺さぶる体験」「新たな方法を探るための研究/行動」「お互いの差異を発見できる時/場」などと説明されていました。

参考: モジュール2-1「実践入門:アートを通したサイエンスコミュニケーション」(7/1)朴炫貞先生講義レポート – CoSTEP

ちなみにその数日前に、CoSTEPスタッフの奥本素子さんと朴さんによるトークイベントも見に行きました。私はまだ、科学技術コミュニケーションとアートの付き合い方が、よくわかりません: 『サイエンスコミュニケーションとアートを融合する』- 札幌から始まるアートでつなぐサイエンス – を開催します – CoSTEP

伝えるプレゼンテーション(古澤正三・池田貴子)

プレゼンテーションについて、その前提や魅せ方などが解説されていました。

これに関連して、秋には本科生が実際にプレゼンをしてフィードバックを受けるプレゼン演習が開催されます。

参考: モジュール2-2「伝えるプレゼンテーション」(7/8)古澤正三先生・池⽥貴⼦先生講義レポート – CoSTEP

映像メディアによる科学技術コミュニケーション(早岡英介)

新聞記者を経てNHKで科学番組などの制作を行い、CoSTEPのスタッフを務めたのちに、現在はCoSTEP客員教授の早岡さんによる講義。

制作されたさまざまな映像が紹介されましたが、特に、次の動画にある森の様子が美麗で印象に残っています:

また、AI(人工知能)について各所で言及されていたのが印象的でした。たとえばインタビューの書き起こしや自動翻訳、はたまた画像生成。映像の生成まではまだ実用化されていないようですが、それも近いうちにできるようになるのでしょう。

参考: モジュール2-3 「映像メディアによる科学技術コミュニケーション」(7/22)早岡英介先生講義レポート – CoSTEP

科学の目で描くイラストレーション(大内田美沙紀)

CoSTEPのスタッフで、サイエンスイラストレーターとして活躍される大内田美沙紀さんによる講義。これは私にとって特に面白く、私はモジュール2の課題テーマとして取り上げました。

2023-10-15追記: モジュール2課題レポートを公開しました → 2023-10-15の日記

写真が存在する現代におけるイラストレーションの意義や、オーディエンスにあわせてどのような雰囲気や詳細度で描くかについてなどなど、多く例とともに解説されていました。

また、サイエンスイラストレーションの依頼方法や、クリエイターをノせるコツなども紹介されていました。

ちなみに大内田さんは今年(2023)の5月から、医学界新聞で連載されていて、こちらも大変興味深いです: サイエンスイラストで「伝わる」科学 | 連載一覧 | 医学界新聞 | 医学書院

参考:

演習

ディベート演習(種村剛)

モジュール1でも講義を行った(2023-06-25の日記)、元CoSTEPスタッフの種村剛さんによる演習。2回ありました。

1回目は主に座学で、立論の構造について。事実と規範の区別などが論じられていました。

2回目は、「近未来、ブレインマシンインターフェイスによる認知症の治療」という設定で、その是非について数名のグループに分かれて時間内にポスターを制作しました。各グループ、賛否のスタンスは異なりましたが、意見を主張し、その根拠や条件などを述べました。いわゆるディベートとは異なる形態でしたが、自分たちの思っていなかった観点を他グループの主張に発見してまた見え方が変わったりしました。

グラフィックデザイン演習(朴炫貞)

7月に朴炫貞さんによる第1回、9月に池田貴子さんによる第2回が行われました。

朴さんの演習では、解説のあとに、「まずは、手を動かしてみましょう!」ということで、SD班では以前やったことがある「Blind Contour Drawing」(2023-05-21の日記)をはじめ、紙コップへ容量205mlや目盛りを表すなにかをそれぞれ描いたり、スポーツ新聞を切りとって組み合わせてイメージを作ったり、といったワークを行いました。日常を観察し「顔に見えるもの」を探してみよう、という宿題もありました。

実習: 青写真ワークショップ

私の所属するSD班では、担当スタッフの朴さんが提示した「青写真」を題材にワークショップを開催することになりました。

日光で感光する「青写真」は、以前に実習で実際に試していました(2023-06-12の日記)が、それも参考に、今回はふたつの異なるイベントを8月に開催しました。

ひとつめは、サイエンスパークという子供向けの科学イベントへの出展で、20名ほどの子どもとその親たちへ向けたものです。プロジェクターと投影先のあいだに立つことで影を体験してもらったり、用意したオブジェクトを組み合わせて青写真で夏の思い出を描いてもらったりしました:

2023サイエンスパーク|トップ - 総合政策部次世代社会戦略局科学技術振興課

もうひとつは、朴さんが北大キャンパスでやっている温室「アノオンシツ」を舞台にした、大人向けのものです。こちらは「空想植物図鑑」と名付けました。100年後の未来へ想いを馳せ、その時に存在するかもしれない空想の植物を、用意したオブジェクトや持参してもらった品々を用いて青写真にして、それをもとに未来を語る、という催しでした:

青写真ワークショップを開催します – CoSTEP

「空想植物図鑑」フライヤー「空想植物図鑑」フライヤー

開催の1ヶ月ほど前から準備を始めたのですが、なかなかうまく方向性を定められなかったり、タイムテーブルや導線の整理、物品調達などが遅いタイミングになってしまったりとかなり大変でした。運の悪いことに2日間とも曇天で、日光ではなくジェルネイル用ライトを使って感光する方式になったり、ということもありました。

ふたつのイベントとも、なんとか無事に終わってほっとしましたが、直前まで上手くまとめられておらず、心の休まらない日々でした。

選科: 集中演習A(サイエンスイベント企画運営)

私は通学を基本とする本科に在籍していますが、オンラインで講義を聴講している選科Aの集中講義が、7月の3連休にありました(もうひとつの選科Cによる集中講義は、10月の3連休にありました)。

選科A生はこの3日間、北大キャンパスに集まり、グループごとにサイエンスイベントを企画して、最終日にオンラインで開催します(以前はオフラインでやっていたようです):

2023年度 選科A オンラインサイエンスイベントを開催します – CoSTEP

集中演習では、本科生と選科生が交流する場は公には設けられていませんが、見学は自由ということで、その様子を初日に少し覗きに行きました。ただ、各グループとも開催へ向けて取り組んでいて忙しそうで、ちゃんとお話しする機会はありませんでした。後述するもくもく会に参加している方々には挨拶ぐらいはできました。

参考:

もくもく会

「もくもくと講義動画を見て感想を語りあう会」が、CoSTEP公式とは関係なく、有志により定期的にオンラインで開催されており、それにも引き続き参加していました。

もくもく会については、以前何度か日記で述べました:

この時間が一番、じっくりといろいろ話す機会になっているように思います。引き続き、もくもくやっていきたいです 🔦